「努力すれば結果は報われる」とは限らないからこその努力。
ぴあ「究極のカレー」殿堂入りを果たしました。これもひとえに皆さまの応援あってこその身に余る快挙だとスタッフ一同喜んでおります。
この気持ちに嘘偽りは全くございません。
しかし、弊店の店主森川としては複雑な心境で発表を迎えておりました。少しドラマかかった表現は番頭の文体によるもので鼻につく部分があるやもしれませんが、元々シナリオやブログなどを書いております癖でございますので読み進められる方はご容赦ください。
------------------------------------------------
5月末の早朝に、店主森川から電話が来まして、開口一番
「手遅れだった、僕はバカだ」
と、意気消沈した声で言いました。
言いたい事をまず言う癖は高校の頃からで、朝の教室でぐんぐんと僕に迫ってきて
「お前、好かんのじゃ」
と、言ってきた時も
福岡で彼がカレー屋をやっていた頃に初めて電話してきて
「なんでやと思う?」
と、言ってきた時も、とにかく出会い頭に説明や前段も無く、言いたい事を言ってこちらの出方を待つのは彼のパターンでした。
ただ、今回の場合の
「手遅れ」
の、前段についてはうすうす僕も気づいていて
「そうなると厄介だぞ」
と、思ってはいましたが
「やっぱりなあ」
と、覚悟はしていました
究極のカレー殿堂入りによる、総合GPへの道が閉ざされる事を。
なんと申しますか、店主森川は皆さまからはどう見えているか分かりませんが、自分を律するのがかなり苦手な自由人タイプです。
ただ、料理に関しては尋常ならざるストイックさを発揮し、不器用ながら答えがでるまで突き詰めて努力をし続けるタイプなので、彼の中で
「自由人と修行者」
の両極端なパーソナリティが存在しております。
で、この両極端なパーソナリティが噛み合えばZoZoタウンの前澤社長のようにアクティブなプレイングマネージャーになりえたのですが、店主森川の場合はうまく連携が取れません。その結果、経営者としてのスキルが無い店主森川の代わりに番頭がさぼてん食堂の経営的な側面をサポートしておりました。
その店主森川が料理のみではなく経営を含め、お店のイメージ作りなど総体的に考えるようになったのは「究極のカレー」と出会ってからでした。
よく勘違いされてる方がいるのですが、究極のカレーの栄誉は店舗の料理に与えられるのではなく、店舗に与えられます。さぼてん食堂の「牛カツカレー」に与えられているのではなくて「さぼてん食堂」に与えられているのです。
料理、接客、お店の雰囲気、口コミ等々、全てがある一定のクオリティを要求されます。
もし天才であれば、その「料理」1点のみに特化し、総合グランプリの栄誉を手に入れる事が出来るかもしれませんが、店主森川は凡人です。神の舌を持つ訳でも有名店で修行した訳でもなく、ただひたすら自分のカレーを改良し続けているだけです。
彼が総合GPを目指したいと言って来た時は正直びっくりしました。
僕的には絶対に勝てない競争にチャレンジするとは思いもよらなかったからです。
とりあえず僕は世の中のニーズやトレンドを調べて友人知人の料理人に相談して、その結果をもって店主森川と打ち合わせをしました。そのままを伝えるとそのままを作ってしまうのでヒントやイメージや食材のみを伝え、最終工程はニュアンスですすめるのですが、こちらのレシピのクオリティを上回るものを彼は作りだしたので
「とにかく、それを作りたい理由がきちんとあれば君の場合は美味しいものが作れるからそれでいこう」
と、彼の感性に任せてみました。
結果、その商品は大当たりしました。
「この努力をあと1年早くやっていれば違った未来もあったのだろう」
という、気持ちが冒頭の
「手遅れだった、僕はバカだ」
に繋がります。
その5月の時はひとしきり店主森川の反省というか懺悔を聞いて終わりました。
で、「究極のカレー2020」が発売された日、いつもであれば催促しないと書かないブログ原稿が届きました。弊店のブログは基本的に一度僕が誤字脱字や読みやすさや意図が伝わるかなどをチェックしてからブログサイトにあげる形をとっています。
よっぽどの事が無い限り、書き直すとかはありえないのですが内容があまりにも不穏すぎて現実的ではなかったので一旦保留にして店主森川と話し合いをしました。
簡単に言うと
「殿堂入り店では総合GPは目指せない」
「新しい店であれば総合GPを目指せる」
「さぼてん食堂を閉めて新店を立ち上げて総合GPを目指したい」
との事。
「そこまで総合GP欲しかったの?」
という驚きが番頭にはありました。
しかしこのままさぼてん食堂がなくなるのはシャレにならないので
「お金どないすんの?」
「さぼてん食堂好きなお客さんは?」
など言いながら数字とお客様のツイッターや弊店へのレビューなどを示しながら説明しました。お金の件はともかく、さぼてん食堂を応援してくださっていたお客様の事を失念していた事に店主森川はかなり驚いて
「情けない」
と、また意気消沈していました。
それから高校時代のアホな話をひとしきりして
「8月の5周年メニューで何でここが総合GP取られへんかったんや?と、皆に思わせるカレーを作ったら君の勝ち」
と話が一応まとまりました。
今年はワンコイン祭りはしません。
今年の5周年のカレーは店主森川の様々な経験とスキルと総合GPへの情念を形にした
「(仮)ぴあ究極のカレー殿堂入りカレー」
をご提供する予定です。
さぼてん食堂の店主森川が「究極のカレー総合GP」を獲る為に野球の強豪高校のようなストイックさと根性を発揮し、時間と諸々を費やした事を手前味噌ではありますが皆様にお伝えしたく長々と書かせていただきました。
人間なので色々な感情や気持ちがあります。
当分の間、店主森川は燃え尽き症候群のような状態になるかもしれませんが、それはこのような事の結果ですのであたたかい目でよろしくお願い致します。
【追伸】
番頭的にはビブグルマンくらい目指して欲しいんですけどね。